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「父への恋文」、そして「孤愁-サウダーデ」

父への恋文 サウダーデ


出版社に勤めていると、編集のみならず、自分史の書き方等についても尋ねられることがあります。
私自身は決して文章が上手ということはないのですが、出版に携わる人間として、お答えすることも時々あります。
その中で一例として、人生を幾つかの時期に区切って、書く事柄を箇条書き等で予め書き出しておくことです。そうすると、全体の構成も見えてくるし、何も無いところからよりも随分書きやすくなるのです。

そんなことを考えていると、ふと、作家の新田次郎(1912-1980)のことを思い出しました。「強力伝」で直木賞を受賞。多くの山岳小説や「武田信玄」等の歴史小説を著し、その他でも「アラスカ物語」などの傑作を残しました。堅牢で破綻のない構成と無駄のない文章が特徴の作家でした。

以前、長女の藤原咲子さんが書いた「父への恋文-新田次郎の娘に生まれて」を読んだときのことですが、新田氏は小説を書くときに、”小説構成表”なるものを作っていたそうです。時間軸に沿って頁ナンバーが記されており、そこに小説の内容と進行がこと細かく書かれている……私はこの文章を読んだときに、唖然としました。これならば、構成表が出来上がった段階で、既に小説のかなりの部分が出来上がっているではないか、と。
「堅牢な構成」と評される新田次郎の文学の真髄を見た思いがしました。

一方、新田次郎は「堅牢な構成」ばかりの作家ではありません。未完の遺作となった「孤愁-サウダーデ」では、明治時代、日本に惹かれて住むようになり、遂に生をまっとうした、ポルトガル人のヴェンセスラウ・デ・モラエスを取り上げています。一般的にポルトガル(とブラジル人)にしか理解できないという「サウダーデ(サウダージ)=愛するものの不在によって引き起こされる、胸の疼くようなメランコリックな思いや懐かしさ」を見事に表現しており、一件堅物と思われながらも、大変なロマンチストだったのだと思います。
また、数少ない少年向けの小説「つぶやき岩の秘密」でも、幼い頃に亡くなった両親を思う少年の微妙な心理と成長を鮮やかに描きだしています。

合理主義者であり「堅牢な構成」の文章と、溢れるようなロマンチシズム(サウダーデ)の感覚をあわせもっていた作家・新田次郎。没後30年を迎える今、もう一度読み直してみたいと思ったのでした。

ちなみに次男の藤原正彦氏は数学者でありエッセイストとしても著名。ベストセラーとなった「国家の品格」の著者でもあります。(工藤)
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  • Date : 2010-02-25 (Thu)
  • Category : 未分類
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