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年の瀬に書評

今日、道すがら1冊の本を読み終えた。

仕事納めを迎えるこの日、
会社へ向かう通勤電車で最後の1ページをめくったのはこの本だ。




人の砂漠

『人の砂漠』沢木耕太郎著 1980年新潮社



ところで、つい先日、気になるニュースを耳にした。

ロシア側に5億円提供、漁業4社を聴取へ


ここで、人の砂漠収録のルポ、『ロシアを望む岬』の一文を引用したい。


--------

≪あんたの言い方によると、北方領土は返ってこない方がいいみたいに聞こえるぜ≫

すると、彼は船の舵を握りながら、真顔で頷いた。

≪だって、戻ってきたら権利だなんだってみんなに食い荒らされるけど……≫と言って息をついだ。

≪今のままなら、あの海は全部、俺のものだもんな……≫

--------

30年以上も前の話にはなるが、
北海道(ここでは根室)ではソ連の主張している12海里線を越えての「特攻」漁が
日常的に行われていたそうだ(おそらく現在でもそうだろうが)。
当然、ソ連に見つかれば拿捕されてしまう。

漁師たちはその危険を承知で漁に出る。

拿捕保険なるものまであるそうだ。

中には、ニュースの漁業会社ではないが
ソ連と黒い関係を持つことで身の保証をたてながら漁に出るものもいた。

そんな船は、「御朱印船」と呼ばれたそうだ。

御朱印船の船主はそれはそれは羽振りがよかったそうで、
ソ連による拿捕の危険を顧みずに出漁しなければならないような地域において、
不自然なまでに豪華な家を建てていたそうな。


先ほどの引用の直前に、船の舵をとる船主はこのようなことを言っていた。

--------

  もしあの線がなかったら、本土のデカイ船がやって来てアッという間に、資源の枯渇するほど取りつくされてしまうにちがいない。

  少しの危険を覚悟で行けば、俺たちみたいな弱小の漁師が何とか食うくらいの漁獲はある。

  ソ連船が警備しているから取りすぎもせず、資源保護のためにもちょうどいいのではないか。

--------


沢木氏のルポ、とりわけこの『人の砂漠』を読むとことさらに思う。

百聞は一見にしかずと。

知っているつもりになっているものが自分の中にどれぐらいあるものか。

そういったものを見分けることは難しいかもしれない。

それでもやはり、経験と接に結び付けられた言葉は傍目にも現場の匂いを感じさせる。


日本が北方領土の返還を求めていることは知っている。
なぜ北方領土が実質ロシアの支配下になってしまっているかも知っている。

だが、北方領土との狭間で暮す人たちの実際をどれほど知っているだろうか。

言葉だけでは見えてこない実際はそこにある。

それを伺い知るには、百聞か一見が必要であろう。

少なくとも一聞や十聞ではとうてい伺いしれない。


この『人の砂漠』は、そんな思いにさせる一著であった。



ちなみに昨晩、前田を寝不足に追い込んだ魔物はこちら。

最初の哲学者

『最初の哲学者』柳広司著 2010年幻冬舎


(前田)
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